アイアンを味方に!「良い構え方(アドレス)」を藤井誠プロが解説

 

スポーツにおけるゴルフの”構え”とは

そもそも”構える”という言い方が適切かどうか、考えてみる必要があるかもしれません。 “構える”というと剣術の試合で敵と対峙したときの様子を思い浮かべてしまいます。MLBのピッチャーに対してバッターは構えると言っていいでしょう。つまり相手の出方を待つという意味も含まれているように思います。 しかしゴルフには剣道のような目の前の敵は存在しません。 ゴルフクラブを使ってボールをうまく飛ばしたり、転がしたり、パターを使ってカップにボールを沈めるだけです。ゴルフクラブを持ったときを“構え”と言いますが、 対峙する相手の出方を待つ反射的、あるいは受動的な運動ではなく、自分から積極的に動き出すための姿勢であるわけです。 英語ではアドレス(住所、演説の意味ですが、語源は「何かを特定の目的や方向に向けるイメージ」です)をとるという言い方になるのですが、敵がいないのだからこちらの方がしっくりくるような気がします。 とにかくアイアンの構え方を考えてみます。

 

アイアンとは

一般的に5番アイアンからPWまでをアイアンクラブと呼び、番手ごとに変わる飛距離は人によって異なりますが5ヤードから10ヤードというところでしょうか。 コースでプレーをするときに、自分が打ちたい距離に合わせて持つアイアンの番手が変わるということです。

藤井プロの場合の番手別飛距離

また、コース上で遭遇する様々なライ(ボールの置かれている地面の状況)に対応し、 そこからどんな弾道のボールを何ヤードくらい打つか決めるときにアイアンは常に強い味方になってくれます。

 

アイアンの構え方の基本

アイアンは平坦なフェアウエイでまっすぐなボールを打つためだけに作られたものではありません。 構え方の基本はゴルフクラブに”仕事”をしてもらうために自分の身体をどのようにセットするかがポイントになります。 つまりクラブ主体で考えていかなければいけません。すべてはクラブが動きやすいように準備することが良い構えに繋がると言っていいと思います。

シャフトとグリップ

平らな場所でクラブを構えた人を正面から見たとき、シャフトは水平線に対してほぼ垂直になっています。 グリップは左手が上部に位置し、それを軽く包み込むように右手が下部にセットされます。ほんの少しですが右手が下に位置することで、クラブヘッドの位置は心臓の下あたりになります。 グリップは両手のすべての指、掌(てのひら)、そして手首の角度に至るまですべてのパーツがスイング中に効率良くヘッドスピードを上げるために重要な働きをします。 身体とクラブの接続点としての大切な役割を果たさなければなりません。(グリップに関しての細かい説明は次回とさせていただきます)

自分に合ったライ角を

飛球線後方から見たとき骨盤の前傾で頭と肩の位置が少し前になります。両肩から柳の枝のようにダラリと垂れた両腕はグリップをして上腕が胸の筋肉に接触することで少しだけ前の方に押し出されます。 その位置でアイアンのヘッドを地面にセットしたとき、トゥ(クラブへッドの先端側)の下に10円玉が一枚から一枚半分入るくらいのスペースがなければいけません。 クラブのリーディングエッジ(クラブへッドの底面)を地面にセットしたときにシャフトと地面の間にできる角度をライ角と言います。

このようにセットされたヘッドを後方から見たときにできあがるライ角が自分に合っていないクラブを使うとナイスショットはいくら練習を積んでも望めません。ライ角はそれくらい大切なものです。

 

両腕の状態

両肩は力みがなく、腕の重さが感じられるくらいの状態が望ましい。 両腕の上腕三頭筋が胸筋と広背筋に少し触れている感覚が欲しいです。スイング中、腕と胸を繋げる大切なポイントになります。

足の幅(スタンス)

足の幅(スタンス)は両肩幅と同じくらいでセットして良いと思います。 距離をコントロールするときにスタンスを狭くして調整することができます。

ヘッドスピードを作る順番

ボールの曲がりを様々にコントロールするためにある程度のヘッドスピードが必要になります。そのために骨盤から下の骨と筋肉でエネルギーを作り、それを腕→シャフト→ヘッドという順番で伝えます。 正しい構えの条件に骨盤を少しだけ前傾させることが入ります。それは右の股関節からテークバックを始まるための準備にもなっています。

良い構え(アドレス)とは

“良い構え(アドレス)”とは、静から動に、ターゲットに向かって正しくスイングを始動させるための心地よい姿勢と考えるべきなのだと思います。 正しい姿勢とは、体幹を含む下半身の大きな筋肉群をすべて使える準備ができていることを言います。 ボールに向かって構える意識を捨て、ターゲットに向かって正しく立つこと、それがアドレスなのです。ボールは正しく立って、気持ちよくスイングしたときの通過地点にセットできればOK。

アドレス時はすべての筋肉に緊張はなく、ある程度リラックスをしています。 下半身(足裏)リードでスイングが始まり、腕、グリップ、クラブはそのあとを追いかけるように動いていきます。 それらが順番通りに最 後まで動くことができるようにセットされるのが”良い構え(アドレス)”になります。

 

▼ぜひこちらのYouTube動画を参考にしてください。

 

 

執筆者である藤井誠のプロフィール。 「ザ・プレミアムバックステージのインストラクター(PGAティーチングプロA級)(ジュニア指導員)。 東京都出身。 ゴルフを極めるため米・フロリダ州オーランドで修行。 帰国後、米軍多摩ヒルズゴルフコースで副支配人として勤務しながら、ジュニアのための“多摩キッズ”を創設し、ジュニア世界大会やのちの全米女子アマ優勝者を輩出。 オーランドゴルフ親善大使。 日本プロゴルフ協会ゴルフ研究論文最優秀賞、PGAティーチングプロアワード優秀賞など受賞。」

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